「生命保険のデータはどこにも載っていない。タイトルは悪い冗談ではないか?」
ある保険会社のホームページで「知って得する生命保険データ集」という項目をクリックして感じたことです。
「保険を検討する際に参考にして欲しい各種データをまとめました」と案内文にあるのですが、「不安材料」が列挙されているばかりです。生命保険の活用が理に適っているのかどうか、平たく言うと、お客様にとって「いい買い物」なのかどうかを考えるための「判断材料」はどこにもありません。
たとえば、「死亡の原因と頻度」という項目には次のようなデータが並んでいます。
悪性新生物 1分32秒に1人
心疾患(高血圧症を除く)2分54秒に1人
脳卒中 4分15秒に1人
不慮の事故 13分47秒に1人
糖尿病 36分21秒に1人
そして「万一のときのこと、考えたくないけれど、もしかしたら結構身近なことかもしれません」という見出しがついています。厚生労働省の2008年度人口動態統計の概況から算出したそうです。
こうしたデータに接して、「次々と人が死んでいる、やはり、しっかり保険に入っておかないといけない」と考えるべきなのでしょうか。私は素朴に「1年といった限られた時間を分母にして計算することに意味があるだろうか? この数字をどう見たらいいのかさっぱりわからない」と感じます。
仮に、高齢者の増加が、「分刻みで発生する死亡者」という印象を与えそうなデータに関係しているとしたら、保険活用の妥当性とは何の関係もないはずだ、と思います。子供がいても、普通、自立しているでしょうし、相続対策が必要な方などを除き、一生涯の死亡保障に強くこだわることもないと考えるからです。
万が一に備えるため、保険加入を検討する人に役に立つ1年単位のデータがあるとしたら、たとえば加入者に対する死亡保険金の支払いが、業界全体で毎年0.5%にも達していないことでしょう。
私はこの数字を知った時、小さな子供がいる人でもない限り「保険に入るのが当たり前」といった考え方はしなくていいのではないか? と感じてしまいました。いずれにしても、保険金支払いに関するデータの方が、厚生労働省のデータから計算した数字に触れるより、保険という買い物をする上での判断を助けてくれるのは確かでしょう。
万が一に備えるのではなく、生きていく上で必要になるお金に関しても同じようなことがいえると思います。
データ集には「家計の金融行動に関する世論調査」(金融広報委員会、2009年、2人以上世帯調査)で、「老後の暮らしを心配している」と回答した人が84.2%だったとあります。その理由としては、複数回答が可能で「十分な貯蓄がないから」「年金や保険が十分ではないから」が70%を超えています。
これに対しては、「(70%を超えて)突出している上位2つの理由は前もって準備が可能なこと。把握して準備できれば、心配がなくなります」と書かれています。
質問する意味があるだろうかと感じます。「何の心配もしていない」と回答する人が多い方が、不思議な気がするからです。また、低金利で長期間資金が拘束されることから「今どきの保険は老後資金準備には向かない」とも考えられます。「準備手段として保険が優れている理由」が併記されていないのは不可解です。
思えば、本稿の最初の方で引用した分刻みのデータなどは、私が保険業界で仕事を始めた16年前からパンフレット等に掲載されていました。同様に、老後の生活に関するアンケート調査なども定番と言えるものです。
保険会社は、あくまでもお客様に「『不安』と『保険』をセットで考えて欲しい」のかもしれません。
保険は安心を買うもの。
病気や事故が起こったとき、
たくさんの貯金でまかなえる人は、保険は必要なし。
お金がない人こそ、保険に加入しておかなくっちゃ!!
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